環境材料学

この講座の研究テーマは、鋼構造と鉄筋コンクリート構造です。私たちは建築構造に使われる鋼材とコンクリートの長所と短所を調べ、安全で環境負荷の少ない使い方を提案しています。

研究は、建物の柱、梁、壁の縮小模型を用いた実験や、FEMなどの数値シミュレーションを通して実施しています。

教員

金子 佳生 ( Yoshio KANEKO )

金子 佳生教授(工学研究科)

研究テーマ

  1. セメント系材料及び高性能合金の構成則構築
  2. 新しい構造接合の開発と環境共生への適用
  3. 損傷制御機構を用いたスマート構造の機能創生
  4. 構成則に基づく力学モデルの構築と設計法への適用

連絡先

桂キャンパス C1棟4ブロック 4階485号室
TEL: 075-383-3285
E-mail: kaneko@archi.kyoto-u.ac.jp

佐藤 裕一 ( Yuichi SATO )

佐藤 裕一助教(工学研究科)

研究テーマ

  1. セメント系複合材料のひび割れ・付着性状の研究
  2. FEMによる建築構造・材料の挙動の解析

連絡先

桂キャンパス C1棟4ブロック 4階488号室
TEL: 075-383-3288
FAX: 075-383-3288
E-mail: satou@archi.kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

損傷制御機構を用いたスマート構造の機能創生

建築物が遭遇する外乱に対して明確な性能表示を行うことは、緊急の社会的要請であり、地域防災を念頭に置いた質的な性能向上と長寿命化を達成することは、地球環境保全の観点からも、重要な研究課題である。

このような社会的かつ科学的課題を達成するために、外乱とその結果として生ずる応答を検知して、損傷レベルに応じて多段階制御を実行する機構を建築物に付与した損傷制御構造を構築する必要がある。

このような研究背景に対し、従来の建築システムに組み込みやすく、視覚的損傷検知が可能なセメント系複合材料を活用した損傷検知・ダンパー機構と、損傷進展に伴う靭性向上と最大ひずみ記憶性を有する高性能合金TRIP (TRansformation Induced Plasticity) 鋼を用いた損傷検知・修復機構を組み合せた自律的な「多段階制御機構」を提案している。

ここでは、損傷検知・ダンパー機構に対し、ハイブリッド型繊維補強セメント系複合材料を用い、エネルギー吸収性能に優れた部材を並列配置した制震壁を提案している。 そして多段階に破壊する機構を付与することにより必要剛性・耐力を調整し、同時に履歴による減衰効果を付加するという構造特性を検証している。 さらに、損傷レベルが視覚的に判断でき、損傷検知後の修復が可能であることを明らかにしている。

また、損傷検知・修復機構に対し、Fe-Cr系のステンレス合金であるTRIP鋼とステンレス鋼を用い、実用化に向けて重要な研究課題である交番繰り返し載荷時の磁気特性(最大ひずみ記憶能)を定量化し、ステンレス鋼と比較したTRIP鋼の高い損傷検知・修復特性、及び応力-ひずみ履歴と磁気の変化との相関性を明らかにしている。

これらの研究は、材料・構造レベルでの自律的な「多段階制御機構」に基づく構造システムの創生という、基礎から応用までの幅広い研究による新しい領域を開拓したものであり、今後はその応用に重点をおいた研究を目指している。

Fig.1
図-1 地域防災システムとしての展開構造

新しい構造接合の開発と環境共生への適用

建築基準法改正により、高い性能を確保するのみでなく、必要に応じた様々な性能レベルと形態を持つ建築が可能となった。そのため、環境負荷低減を目指した新しい建築構造システムを構築し、地球環境保護の観点から建築性能を見直す必要性が生じてきた。

このような研究背景に対し、これまで建築構造物ではあまり配慮されてこなかった環境負荷が少なく、簡便につくれて簡便に取り替えられる、リサイクル材料の使用も可能な建築構造システムに着目し、建築鋼構造における従来の溶接やボルト接合による柱梁接合部や基礎への埋め込みを余儀なくされている柱基礎接合部などに対し、現在、マイクロメカニックスによりその材料基礎特性の研究が進められている繊維補強セメント系複合材料を接合材として使用した独創的な「接合構造システム」を提案している。

さらに、実験及び非線形有限要素法解析に基づき繊維補強セメント系複合材料の材料構成則を定式化し、(1)の研究成果である巨視的せん断破壊力学モデルを適用して、接合部の微視的破壊・変形特性の定量化と「接合構造システム」を適用した架構全体の構造性能評価手法を提案している。

本手法の提案により、これまでの溶接で要求された高い材料品質を持たないリサイクル材料などの使用を視野に入れ、生産性が高く、信頼性を損なわない新しい接合法を用い、強度指向型、靭性指向型などの種々の接合部に応じた建築性能を理論的に制御する環境負荷低減を目指したシステムとして統合する可能性を明らかにしている。

この成果は、接合部の材料・構造レベルでの複雑な破壊挙動を評価できる数理モデルに基づく構造システムの創生という、基礎から応用までの幅広い研究による新しい領域を開拓したものであり、今後はその応用に重点をおいた研究を目指している。

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図-2 繊維補強セメント系複合材料による接合型柱脚

コンピューターを用いたコンクリート系構造物の挙動予測

従来のせん断破壊に関する研究では、膨大な数にのぼる部材実験の結果を現象論的にとらえ、せん断スパン比をパラメータとする経験則に基づく設計式を見出すことが中心的課題であった。

その後、ひび割れ発生後のせん断力の伝達及びせん断補強筋の効果をアーチ作用・トラス作用・鉄筋のダボ作用の複合作用としてとらえる構造学的な研究が盛んに行なわれたが、基本的には部材レベルの力学挙動を問題の対象としてきた。
従って、新たな構工法の開発にもつながるような基本的なせん断破壊メカニズムについては、未だ十分に解明されていないのが現状である。

そのため、せん断耐力と非線形せん断変形挙動を理論的に評価することの出来る「せん断破壊理論」の確立が強く求められている。このような研究背景に対し、「せん断軟化」という新しい概念を導入した、コンクリートの「せん断破壊理論」の確立とその応用を目指し、材料から構造レベルに至るまで適用可能な巨視的せん断破壊力学モデルを当該分野では他に先駆けて提案している。

このモデルの工学的意義は、コンクリートの引張破壊モデルとして国際的にも定着しつつある破壊力学手法を、せん断破壊とその軟化特性のモデル化にまで拡張した、新たな展開を提示していること、さらに、せん断破壊挙動を定量的に表現する為に必要な、力学的パラメータを抽出する評価手法を構築していることである。
そのため、コンクリートを含む全てのセメント系材料、及び鉄筋コンクリート構造物のみでなく、鋼構造物の接合部などの広範囲な構造システムに対して適用可能であるという一般性を有しており、その実用的価値は大きい。

また、「せん断破壊理論」を各種接合部及び新材料・新構工法へと応用し、さらに変形制御に重点をおいた構造設計の方向性を先駆けて明らかにしている。本理論は、これまで十分に解明されていなかったせん断破壊とその軟化特性に対し、材料・構造レベルにおいて、評価出来る数理モデルを構築したものであり、今後はその応用に重点をおいた研究を目指している。

このほか工学分野で普及しているFEM(有限要素法)を用いて、鉄筋コンクリート建物の挙動を解析する。

地震により損傷を受けたコンクリート構造物の性能評価を重点的に実施している。

fig3_2014
図-3  FEM解析による鉄筋コンクリート建物の時刻歴応答解析