音環境学

音と空間:そのあり方と設計・制御

 空間の質を決定する大きな要因の一つに音環境があり、生理的・心理的ストレスの少ない都市環境を実現するためにはこれを最適な状態に制御することが重要となります。私たちの居住空間でも様々な状況と、音に対して要求される性状の違いにより、音環境はどうあるべきかも変化します。
 本研究室では音環境という物理量と人間の生理・心理的応答を総合的に捉えることにより、居住空間における音環境のあり方、最良の状態への制御、そのための新しい音響材料の開発、音場計測・予測・制御・呈示技術の開発、およびその応用としての音環境設計などについて教育・研究を行っています。

教員

大谷 真 ( Makoto OTANI )2018-otani

教授(工学研究科)

研究テーマ

  • 音空間の可聴化

  • 聴覚による空間知覚メカニズムの解明

  • 聴覚ディスプレイの開発

連絡先

桂キャンパス C1-4棟 385号室
TEL: 075-383-3291
FAX: 075-383-3291
E-mail: otani@archi.kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

音空間予測のための数値解析手法の開発

 音響的に優れた空間を得るためには、設計段階で完成後の音空間を正確に予測することが必要となります。本研究室では、室内音響設計・騒音制御を目的とした建物内外での音場予測のための数値解析手法の開発を行っています。特に音源に関して、その移動や指向性なども考慮可能なシミュレーション技術を開発し、さらにその結果の可視化などにより、室内の音場を改善したり、様々な騒音源から放射される音を低減したりすることによりさまざまな音響問題の解決を目指しています。

 
図-1 コンサートホールのステージと1階客席での音圧レベル分布の解析例
(図の左上、Xが負の範囲がステージ)

音空間の可聴化に関する研究

 完成後の建築内の音空間が聴覚的にどのように知覚されるのかをその設計段階において体験することを可能にする「可聴化」が実現されれば、快適な音環境の設計に大きく貢献できます。実空間と区別がつかない高精度な可聴化を実現するためには、1) 数値解析による正確な室内及び人体周りの音場予測、2)空間情報を保持したまま音空間を呈示する聴覚ディスプレイ、という2つの要素技術が必要であり、これらの研究をおこなっています。

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図-2 耳介周りの音波の挙動の数値解析例

音響材料に関する研究

 音空間の境界面を形成する材料の音響的特性は遮音、吸音、反射・散乱、放射などの項目で記述されます。これらを理論解析と実験を通じて、音響メタマテリアルなどの新しい音響材料の開発と、音響的ニーズに対応した利用法の開発を目指します。

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図-3  音響管を使用した新しい音響材料の開発に関する実験

音場の物理的性状と聴感に関する研究

 構造や材料の変更により、音質評価指標などの音の物理特性が改善しても、必ずしも人間の聴感的には改善が見られない場合があります。心理聴感実験を柱に、音の変化量が人に対してどのように影響するかを明らかとするとともに、良好な音場生成を目指します。

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図-4 拡散性反射面による音場の測定とその評価に関する実験