都市防災計画学

環境、景観、歴史、文化と調和した都市防災計画学の展開

わが国の都市は古来大地震や大火災により甚大な被害を蒙ってきた。近年は消防力の充実や建築物不燃化の推進によって都市大火災は著しく減少しているが、他方かつては世界で最も美しいと賞賛されたわが国の都市景観は著しく損なわれた。都市は、まず安全であることは全ての基盤であるが、また国や地域の歴史、文化、民度を象徴するものであり、それらに相応しい風格を備えていなければならない。

本研究室では環境、景観、歴史、文化と調和しながら、かつ安全性も高い都市防災計画のあり方を考究してゆく。

教員

牧 紀男 ( Norio MAKI )

教授(防災研究所)

研究テーマ

連絡先

研究テーマ・開発紹介

物理的基盤に立脚した市街地火災延焼モデルの開発

本研究は、地域防災計画における地震火災被害予測の適正化に資するため、従来の「浜田式」と言われる統計的モデルに代わり、延焼の物理的機構を基盤にした新たな市街地火災延焼予測モデルを開発することを目指して進めているものである。

この研究では、市街地火災の延焼に関わる物理現象を、

  1. 家屋の火災性状
  2. 区画壁を通す熱移動
  3. 燃焼家屋からの火炎と熱気流の発生
  4. 熱気流から家屋への対流熱伝達
  5. 火災家屋からの輻射熱伝達
  6. 熱伝達を受けた家屋の温度上昇と着火

の要素に分けて数学モデル化し、コンピューターモデルとして構築する。従来の統計的モデルに比較したときの、このような物理的延焼モデルの利点の1つは、例えば家屋の床の耐火性を若干向上させると地震火災危険の低減にどの程度寄与するかなど、様々な対策の効果が評価出来ることである。

Fig.1
図-1 物理的基盤に立脚した市街地火災延焼モデルの開発

火災気流による危険度の推定と市街地住民避難性状の分析

市街地火災の延焼速度は、せいぜい毎時数百m程度でゆっくりしているので、避難者が火災自体に追いつかれることは考え難い。多数の犠牲者が発生する主な原因は、強風下で市街地を覆う猛煙、避難を阻害する都市の構造、火災の煙や輻射熱に対する人体の脆弱性および住民の家屋や家財に対する執着などの心理的要因であろうと考えられる。

本研究では、これら4つの要素を組み込んだ市街地火災の延焼性状および都市避難予測コンピューターモデルを構築し、過去の大火時の市街地、住民、気象などの状況を文献資料の調査結果と合わせて、当時の火災状況および都市住民避難状況をコンピューター画像上に再現する手法を開発し、火災時都市避難に関する問題点の所在を分析する。

Fig.2
図-2 酒田市大火(1976)における火災気流温度の推定

二層ゾーン煙流動予測モデルの開発

工学的設計手法に基づいた性能的煙制御計画を行う際には、妥当に設定された設計火源の下で起こり得る煙挙動を工学的誤差の範囲内で有意に予測することが必要不可欠である。

そのような計画の安全性の検討に煙流動予測計算プログラムBRI2(またはその改訂版であるBRI2T)は、建物内煙流動性状に関する研究や実際の建築物の煙制御計画の検討などに広く使用されてきた。

一方、初版のBRI2が出版されてから、今までの十数年間に、火災現象についても理解がかなり進んだ部分がある。このため、これらの研究成果も導入し、また使用上の利便性の向上も図ってプログラムを改訂することにした。

Fig.3
図-3 煙流動予測プログラムの改定出版(BRI2002)